三割高下に向かえ

相場が上がれば、際限なく欲の爪を伸ばし「とことん上がるまで売るものか」というタイプの投資家が多い。その欲が災いして、取れるものも取れず、あまつさえ損勘定になってしまう例も多いようだ。

そこで、あらかじめ目標を立てておき、何割上がったら後はどうあろうとも利食い売りしようとする戦法がある。ただし、これは波乱含みの相場には通用しにくい面がある。普通の穏当な値動きのときだけに応用すべきだろう。例えば100円の株式を買ったら3割高の130円で売るわけで、いわば投資資金の効率(回転率)を高めよという教えである。むろん、この戦法をとる限り、余計な迷いを寄せつけないという効用もある。

そうした個別の株式に対する戦法を教えるほかに、相場全体の動きを把握する意味も持っている。つまり「3割」というところは、上げにしても下げにしても一つの転機になるというものだ。したがって、ある出発点から3割上がったところは売り、3割下がったところは買いのサインと見るわけである。次に紹介する言葉のとおり、2割、3割の高下(高安)まではその相場の流れに従うのが自然というべきだろう。

  • 高下とも五分、一割にしたがいて、二割、三割は向かう理と知れ。(三猿金泉秘録)


二度に買うべし 二度に売るべし

自分の判断が本当に正しいかどうかは、結果を見てみなければ分からない。買ってみるか、売ってみるかして、さてどういう結果が出るか。当たりか、それともはずれか。いくら自信があっても、相場がそのとおりに動く保証はない。これまでも繰り返し述べてきたとおりである。「相場は相場に聞け」ではないが、まず相場にさぐりを入れる。つまり打診をして、自分の判断の当否を確かめてみてはどうか。その結果、予想通りであることが分かったら、そこで初めて本格出動してもまだ十分に間に合うはずだ。一度にどっと出ていって失敗することを考えれば、このくらいの手間ヒマは惜しむに価しない。いわば、石橋を叩いて渡るがごとき慎重さが、株式投資には何よりも必要となる。「二度に買うべし 二度に売るべし」は、その慎重さを説いた教訓である。

同時にこの教訓は、一度目の買いで得た自信と確信が二度目の買いを力強く支え、したがって思い切った行動がとれる基盤となる効用も説いている。

買ってみたくなったら、まずほんの少しだけ買ってみる。相場が上がらなければ、だまって待てばよいし、十分な上げの手応えを感じたら全力を投入すればよい。売りはその反対で、ある程度高値にさしかかったと思ったら、ちょっと売ってみる。下がらない。待ってみる。またちょっと売ってみる。まだ下がらない。待つ。さらにまた売ってみる。今度は下がり始めた。そこで全部を売り切ってしまうという寸法。実際には「二度に」ではなく、三度でも四度でも打診を続け、確信が持てたら、全軍を出撃させることだ。

相場は明日もある」。じっくり構え、慎重に行動するにしくはない。

  • 買い米を一度に買うは無分別。二度に買うべし、二度に売るべし。(三猿金泉秘録)